
一日の作業を終えるころ、現場に差し込む夕方の光は独特である。昼の明るさが徐々に失われ、影が長く伸びていく時間帯――そのわずかな「暗さ」の変化を、私たちは意外と軽視しがちである。
しかし、この「少し暗い」が最も危険を招きやすい。照明をつけるほどではないと感じながらも、視界が不十分になり、足元の段差や工具の位置が見えづらくなる。疲労の溜まる時間帯でもあり、判断力や注意力が低下しやすい。
事故やヒヤリ・ハットの多くは、この夕方の「中途半端な暗さ」の中で起きているという。安全管理上は、昼と夜の境目こそ最も慎重であるべき時間なのだ。
現場で働く者にとって、照度の確保は基本である。とはいえ照明器具を点けるだけではなく、周囲の変化に敏感であることが肝心だ。「まだ見える」ではなく、「確実に見える」状態を維持する。それが安全を守る第一歩となる。
また、この暗さは現場だけの問題ではない。通退勤の運転にも同じ危険が潜んでいる。日没直前の時間帯は、歩行者や自転車の姿が見えにくく、対向車のライトがまぶしく感じられることもある。特に黒っぽい服を着た歩行者は視認が遅れやすく、わずかな油断が重大事故につながりかねない。車のライトを早めに点ける、スピードを控える、そして「帰るまでが仕事」と心に刻むことが大切である。
